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戦争と経済

テポドンや中国の軍事費増大から、今にも起こるであろう戦争の脅威
を強調する論調があります。また戦争は人間の闘争本能から起こるの
で、永久に亡くならないという人もいます。

はたしてそうでしょうか? 3年前にMLに投稿した意見を再録しま
す。

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戦争の世紀といわれた20世紀、その前半は帝国主義国間による、資源
や市場をめぐっての植民地争奪戦の時代でした。そして先進帝国主義
国である連合国が、圧倒的に優位な武力で、後進帝国主義国である日
独伊を惨敗せしめました。

後半は、いわゆる資本主義国と社会主義国の冷戦の時代でした。武力
は強力になりすぎたゆえに抑止力にしか使えず、経済力による勝負と
なり、経済合理性に劣る社会主義国(私は必ずしも真の社会主義とは
思っていませんが)の完敗となりました。そしてアメリカは世界の覇
者となりました。

しかし冷戦の一番の勝者は、わが日本ではなかったでしょうか? 平
和憲法の下、かつての膨大な軍事費を今度は公共事業に充て、敗戦の
廃墟から高度成長により、一躍世界一、二の経済大国になりました。

かくして、かつての社会主義国はほとんど市場経済に参入することに
なり、経済のグローバル化は急速に進展しました。各国の経済は、網
の目のように、世界経済に組み込まれています。

わが国でも、大企業の多くは、東京に本社はあるものの、工場は世界
各国に、そして従業員もいろいろな人種からなっています。私たちの
衣食住も、世界各国からの輸入品で支えられています。

こういう状況下で、もし世界的な規模の戦争が起こったとしたら、ど
うでしょう? 各国の経済は麻痺し、共倒れになるだけではないでし
ょうか? 最近のSARS騒ぎでも、各国の経済に大きな打撃を与え
ていますが、それとは比較にならないでしょう。

今や国境を越えて、人、物、金が自由に行き来する経済のグローバル
化が、戦争の大きな抑止力になりつつあるといっても過言ではありま
せん。経済の垣根を取っ払って、通貨も統合したEUがそのいい例で
す。かつて何世紀にもわたって戦争を繰り返し、2度も世界大戦の火
種となった、ヨーロッパ各国は、その反省の上に一つにまとまりまし
た。

日本の歴史を見ても、かつて経済単位が分かれていた時代は、主とし
て経済的な利害から、内戦が絶えませんでした。戦国時代の人々にと
っては、戦争は人間の宿命と感じられたでしょう。しかし明治維新に
より、経済の“ナショナル化”が達成され、新潟県と山梨県が川中島
で戦うなどは、もはや考えられなくなりました。今や同様なことが、
地球的規模で起こりつつあるいえるでしょう。

アジアでも、平和と安定を図るためには、お互いに核兵器を持ち合う
のでなく、将来的には、経済共同体を志向すべきと思います。もちろ
んそれは、かつての隷属関係的な”大東亜共栄圏”でなく、共生関係
的なものでなければなりません。

今回のイラク問題でアメリカが武力に頼ったのは、経済力が落ちてき
た表れだとする説もあります。経済力でなく、武力でアメリカのユニ
ラテラリズム(単独主導主義)を世界に押し付けようとするネオコン
の思想は、20世紀型の考え方といえましょう。「古臭い欧州」とこき
下ろした人がいましたが、どちらが古臭いでしょうか?

かつては経済のために戦争が起こりました。21世紀の今は、経済が戦
争の足を引っ張る時代になりつつあるように思われます。  
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プロフィール

西羽 潔

Author:西羽 潔

・1933年生まれの軍国少年OB。
・メーリングリスト「戦争を語り継ごうML」主宰。
・ウェブサイト:「戦争を語り継ごう -リンク集-」
・著書:「むかし、みんな軍国少年だった」(共著)

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