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飢えたるこどもたち (4)

暮らしの手帖 96号 特集・戦時中の暮らしの記録」(1968年8月) 掲載の「飢えたるこどもたち」から引き続き転載します。 ●絵にかいたお菓子

私はキャラメルが大好きで、週に何度か、父が
会杜の帰り、お土産に買ってきてくれたものでし
た。当時は二十粒入りが十銭。ほかの何より、そ
のお土産が一番楽しみでしたが、そのうちお砂糖
が少なくなったせいでしょうか、一人一箱しか売
ってくれなくなりました。しばらくすると、それ
も、十粒入り五銭の小箱になってしまいました。
父のポケットから出てくる黄色い箱が、半分の大
きさになってしまって、とてもつまらなかったの
をおぼえています。

小学校三年生の時、一番小さい組として、甲府
市の旅館へ集団疎開さぜられました(昭和十九
年)。二百人近い子供の食糧の仕入れなど、どな
たがやって下さったのか、さぞ大変なことだった
と思いますが、とにかく三時にはおやつがありま
した。

ちょうど裁物板くらいの、細長い食事台の上に
並んだお皿に、配られるお菓子は本当に毎日の楽
しみでした。ビスケットとあめ玉、かりん糖とお
せんべい、ふかしたおいも、ときには乾燥芋な
ど。お芋の時などは隣のお皿を横目で眺めて、大
きさをくらべてみたりしたものです。

東京の父兄が交替でお見舞に来てくれる時に
は、必ずなにかお菓子を持ってきてくれました。
白分の子供だけに食物を持ってくることは禁止さ
れていましたが、皆でお金を出して買ったお菓子
を持ってきて下さるのです。だから、自分のお母
さんが来てくれる人は勿論、ほかの人たちもみん
な父兄の慰問を楽しみにしていました。

げれども、いくら先生方や父母たちが一生けん
命やって下さっても、世の中から甘い物、おいし
い食物がなくなって行っている時ですから、食べ
たいとおもうものが、思うように食べられなかっ
たわげです。そこで、こんたことが流行しまし
た。

わら半紙にいろいろなお菓子の絵をかくので
す。カステラ、おまんじゅう、お団子、ケーキ、
キャラメル、おせんべい、かりん糖など。みんな
夢中でかきました。自分の知っているお菓子を片
っぱしからかいて、その下に名前を書きこみ、お
互いに見せ合って、そのおいしいことを話し合っ
て楽しんだのです。

六年生の男の子に、お菓子の絵がとても上手な
子がいました。私たち下の組の者は、競ってその
子にかいてもらいたがりました。その子のかくカ
ステラは、真中に渦の巻いたまるいのでしたし、
アイスクリームにはちゃんとウエハースもつい
て、とてもおいしそうでした。

その絵のおかげでその子は大いぱり、私たちは
一生けん命ごきげんをとっては、かいてもらいま
した。その紙を大事に自分の荷物の中へしまいこ
み、毎日出して眺めていました。いつの間にかな
くしてしまいましたが、とっておいたらよかった
と残念に思っています。

絵で代用するほかに、もう一つ子供の頭で考え
た解決策があります。お菓子は絶対に家から送っ
てもらってはいけないのですが、薬はよいという
ことになっていました。そこで、ビオフェルミ
ン、仁丹など、おいしい薬を送ってもらうので
す。

一番人気のあったのが梅肉エキスでした。たい
ていの子は一びん持っていて、時々出しては、細
い棒の先につけてなめていました。とても大切な
ものですから、一度にたくさん食べてしまうこと
はありませんし、それに副作用とか習慣性とかが
問題になるような薬でもありませんでしたから、
ふだんそうして飲んでいても、害はなかったのだ
と思います。

先日、子供が軽い下痢をしたときに、梅肉エキ
スを買ってきて、ちょっとなめてみまたら、こ
んな酢っぱくて苦い味だったかしらとおどろきま
した。もっとおいしいものだったような気がして
いたのです。 (K.N. 藤沢市)
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プロフィール

西羽 潔

Author:西羽 潔

・1933年生まれの軍国少年OB。
・メーリングリスト「戦争を語り継ごうML」主宰。
・ウェブサイト:「戦争を語り継ごう -リンク集-」
・著書:「むかし、みんな軍国少年だった」(共著)

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